こんにちは賢人(けんと)です。
トルコの通貨リラが8月6日、対ドルで最安値を更新しました。
今回はそんな高金利で人気のトルコリラについてお話ししていきます。
結構質問や相談を受けるんですが、トルコリラで損してる人が多すぎるんですよね……。
Contents
年利17%以上!トルコリラとは
トルコリラはトルコ共和國の通貨です。
実は一口で「トルコリラ」といってもトルコでの歴史上では3種類の通貨が登場します。
- トルコリラ:旧通貨
発行:1923年〜2004年、流通:2005年末まで - 新トルコリラ:現行通貨の旧名
発行:2005年〜2008年末 - トルコリラ:現行通貨
発行:2009年1月〜
こうして通貨が変わったのには、もちろん理由があります。
それはインフレーションです。
インスタンブールやカッパドキアなど日本人にも観光地として人気のあるトルコですが、実は経済危機にあったこともある国なのです。
トルコの歴史
トルコでは、1990年代の後半から経済が低調となり、政府は巨額の債務を抱え、急速にインフレーションが進行しました。
トルコの歴代政権はインフレの自主的な抑制を試みますがいずれもに失敗、2000年からIMF(国際通貨基金)の改革プログラムを受けるに至りましたが、その年末に金融危機を起こしてしまいました。
この結果、トルコリラはさらに下落し、国内消費も急激に落ち込むこととなりました。
その後、2002年以後から若干持ち直し、実質GNP成長率は5%以上に復調、さらに同年末に成立した公正発展党単独安定政権の下でインフレの拡大はおおよそ沈静化しました。
そして2005年1月1日には100万トルコリラ (TL) を1新トルコリラ (YTL) とする新通貨を発行し、実質的なデノミネーションが行われ、その後、新トルコリラは名称を変え、現在のトルコリラとなっています。
現在のトルコはG20にも参加している新興経済国です。
G20とは
主要国首脳会議(G7)とは、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ、EUの財務相・中央銀行総裁が出席し世界経済や金融問題を議論する場ですが
G20とは、G7にアルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、欧州連合・欧州中央銀行を加えた会議及びグループのことを言います。
先進国に新興国を加えた主要20か国という呼ばれ方をすることもあります。
トルコは若い人口が多く、将来にかけて労働力人口の増加が予想されていて、順当にけば今後も経済的に成長を見せる有望な国とされています。
トルコリラの下落
しかし、昨今のニュースなどにもあるようにトルコリラの下落が止まりません。
つまりトルコリラの価値が下がり続けているのです。
これにはいくつか理由があります。
まず2015年〜2017年頃のトルコはテロに悩まされました。
過激派組織「イスラム国」(IS)が関与したテロや、クルド人武装組織によるテロ、さらには国内でのクーデター未遂が起きるなど内政状況に大きな影響がでました。
このことが為替に大きな影響を与えたのは確かです。
こうしたトルコの政治状況は、世界的にも注目されています。
そしてトルコリラの今後を考える上で、注目しなければならないのがトルコとアメリカとの関係です。
トルコとアメリカの関係性が近年悪化しているのです。
シリア情勢
トルコとアメリカの関係性を語る上では、シリアについて触れなければなりません。
まずはトルコの位置を見てみてください。
「あっ……」
と思われた方も多いのではないでしょうか。
そう、隣国にシリアとイラクというテロなど情勢的に非常に危険な地域が隣国です。
そしてシリアでは紛争が長く続いています。
イスラム国(IS)が勢力を拡大する原因となっただけでなく、現在のヨーロッパでの難民、移民政策に大きな影響を与えることになり、最近ではアメリカによる爆撃なども行われたシリアの紛争はなぜ起きているのでしょうか。
シリア内戦の勃発
2011年に「アラブの春」をきっかけにシリア紛争は始まりました。
「アラブの春」を簡単に説明すると、チュニジアにおいて長く独裁体制をとってきたベンアリー大統領による独裁政権が崩壊した出来事のことをいいます。
この「アラブの春」をきっかけにアラブ世界の国でも民主化を求めるデモが行われるようになったのです。
そして、シリアでもこの動きが見られるようになります。
民主化を求める市民とアサド政権との対立は、やがて武力をともなう紛争へと発展しました。
アサド政権が民主化運動を繰り広げる市民を軍や治安部隊を使って弾圧しちゃったんですね。これに対し、市民たちの中には武装化したり武装組織をつくるようになったのです。
しかし、民主化を求めていた市民たちは、さすがに自分の命をかけてまでこうした闘争に参加する意志まではなく離脱していきました、その結果、武装組織などだけが活動を続けることになり、「民主化」を求めて起きたこの対立は結果的に「アサド政権を軍事的に打倒する」というものへと変化していったのです。
もちろんこうした中には宗教的な対立があったのも事実ですが、さすがに資産運用からかけ離れすぎてしまうので割愛させてください。
代理戦争と化すシリア内戦
普通に考えれば政府軍にこのような反体制派が敵うはずもなく、早期に政府軍が勝利してこの内戦は終了するものだと思うでしょう。
ところが、反体制派に対して主に3つの存在がシリア国外からの武器や資金の提供を行ったのです。
1つ目は、米国、欧州連合、トルコ、サウジアラビアなどの湾岸産油国です。これらの国は、独裁者であるアサド大統領の退陣を求め、反体制諸派をシリアの「正式な代表」として政治的・軍事的に支持したのです。
2つ目は、シリア国外で活動してきた反体制派の組織です。もともとアサド政権に対して不満を持っていた彼らですが、弾圧や取り締まりを逃れるために周辺諸国で細々と活動せざるを得なかったのです。しかし、この内戦がを機にアサド政権打倒のため、反体制派を支援したのです。
3つ目は、一部の過激なイスラーム主義者たちです。宗教的な対立もシリア内戦では大きな要素です。彼らは、独裁政治と社会の脱イスラーム化を行ってきたアサド政権を打倒するために、世界中からシリア国内の反体制派に合流していったのです。
こうして反体制派が支援を受け、攻勢に転じた結果、アサド政権側の損害も大きくなっていきました。
なんとなく想像がつきますよね?
そう、今度はアサド政権側を支援する存在も現れたのです。
国際社会において欧米諸国の影響力拡大を嫌うロシアや中国、中東でサウジアラビアと競合関係にあるイランが、それぞれアサド政権への支援を強めたのです。
こうして、シリアの民主化と宗教的な対立を元に始まったシリア内戦は、代理戦争の様相を呈してきて、もはや内戦というくくりではなく紛争というものへと変化していったのです。
イスラーム国(IS)の台頭
こうして各国の思惑により、内戦は代理戦争と化し、紛争が泥沼化してきた絶望的な状況下で、「イスラーム国(IS)」が急速に台頭してきました。
紛争の泥沼化によって、政府による統治は機能を失いつつあり、国民同士の一体感が失われていくなかで、国内外から参戦した過激なイスラーム主義者たちの存在感は増していきました。
支援するための存在であった彼らは、いつのまにか反体制派の戦闘能力や組織規模を凌駕するほどの存在へと成長していったのです。
そして、そうした存在の一部の組織が、もはや国家としての機能を失いつつあるシリアの領土の一部を実効支配するようになり、「イスラーム国」の建国を宣言したのです。
こうしていつの間にか、アサド政権と反体制派の争いだったシリア紛争に、イスラーム国(IS)が加わった「三つ巴」の複雑な戦局となってしまったのです。
その結果、当初どちらかを支援していた国などにもその行為の見直しなどを行う事態になりました。
イスラーム国(IS)の制圧とその後のシリア
イスラーム国(IS)は世界各地でテロ活動などを行ったため、アメリカやロシアなどの国がこれに対応するために爆撃などを行い2017年頃には実質的に制圧された状態となりました。
しかしシリア紛争は未だに泥沼から抜け出すことができていません。
現在シリアには3つの対立が存在しています。
- アサド政権と反体制派
- シリアから独立を目指すクルド人勢力
- トルコとクルド人勢力
アサド政権と反体制派の対立は未だに尾をひいていて、もはやどう解決に向かうのか先の見えない状況となっています。
アメリカとトルコの対立
お待たせしました。
アメリカとトルコの関係が悪化し対立関係となりつつあるのには「クルド人」が関わってくるのです。
現在、シリア北東部ではクルド人勢力(西クルディスタン移行期民政局、通称ロジャヴァ)が独立を目指して活動しています。
実はアメリカがイスラーム国(IS)と敵対したいた中、ロジャヴァは、米国が主導する「有志連合」の地上実戦部隊(協力部隊)として、アメリカの掲げる「テロとの戦い」に従事していたのです。
この見返りにロジャヴァ……独立を目指すクルド人たちはアメリカから軍事面、外交面での支持を取り付けていたのです。
そして今年2018年1月、アメリカはロジャヴァの実効支配地域にロジャヴァの軍事部門を中核とする「国境治安部隊」を創設すると発表しました。
この創設の表面的な目的は「ISの復活の阻止」であり、アメリカの掲げる「テロとの戦い」の延長戦にあるものとされました。
ところが、こうしたクルド人の独立運動を快く思わない勢力がいたのです。
それがトルコです。
トルコとクルド人の対立のはじまりは、オスマン帝国の崩壊、つまり第一次世界大戦の時代まで遡ります。
世界史を学ばれた方ならピンとくるかもしれませんが、クルド人たちもまた第一次世界大戦のいわゆる「三枚舌外交」の被害者となってしまったのです。
一時は独立を認められたクルド人たちは、その独立を認めた条約であるセーブル条約が撤回されたためにオスマン帝国の解体に伴い各国に離散していきました。
そして、現在ではトルコ、シリア、イラク、イランなどに居住しているわけです。
しかしトルコにおけるトルコ人とクルド人の共存は長く続きませんでした。
それはトルコが経済成長を目指すために世俗化を試みたのが大きな要因です。
クルド人はイスラーム教に帰依していたためこの政策に不満を持ちました。そしてトルコ政府は、さらなる経済成長を求めて「国民国家化」を目指すためにクルド人たちを山岳トルコ人と呼び同じ民族であると主張したのです。
クルド人たちは、公的空間で自分たちの文字を使用することや、自分はクルド人であるといった主張をすることが禁じられてしまったのです。
(一方的にトルコが悪いようにも見えますが、実はクルド人たちにも問題がないわけではなかったのです)
結果的にクルド人たちはトルコからの独立を目指した運動を行うようになりました。
そうして出来上がったのがクルディスタン労働者党(PKK)とよばれる組織です。
現在では停戦状態となっていますが、クルディスタン労働者党(PKK)とトルコの対立は武力衝突もあったほどの対立でトルコとしては、クルド人に対する印象がよくないのです。
つまりトルコはロジャヴァの動きも快く思っていないのです。
そればかりかクルディスタン労働者党(PKK)との関連性を疑い、なんと「テロリストの一掃」という名目でシリア北部のアフリン地域に攻撃を行ったのです。
この地域を支配しているのは、アメリカが支援するクルド人たちです。
こうしてアメリカとトルコの対立は現在も続き、トルコリラの為替に多大な影響を与えているのです。
最近では、トルコ在住のアメリカ人牧師がトルコで逮捕され、これが問題になって関係がより悪化しかけていますね。
※本記事の歴史的な解釈や政治的な解釈は、あくまで賢人個人がによるものです。間違いや修正してほしいところなどありましたらぜひ連絡ください。
途上国の通貨の見方
1 ドルをどれだけ持っているか
ドルは世界の基軸通貨です。
ドルの価値が大きく落ちることは考えにくいため、
このドルさえ持っていれば、いざというときにドルを売って自国通貨を買うことで通貨の価値を維持することができます。
2 外貨建ての借金の量
借金が自国通貨だけならば自国通貨の価値を下げれば借金の価値もまた下がります。
まさに日本がやろうとしてるのはこれですね。
しかし、財政が弱く国内への借金だけでなく、海外にお金を借りてしまっている場合、時刻通貨の価値がさがると逆に借金の価値が上がってしまいます。
結果、余計に財政が悪化し、さらに海外へ借金するという悪循環に陥ります。
ギリシャの金融危機がこれでしたね。
3 貿易黒字か貿易赤字
黒字だと、その稼いだお金を自国通貨に両替するので、自国通貨の価値があがります。
赤字だと、自国通貨の価値が下がります。
トルコの財政赤字は深刻です。
これらすべての要素において、トルコの状況は非常に悪いです。
その上アメリカとの関係悪化が長引けば本格的に危ないです。
なぜ金利が高いのか
年 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2018年 | 8.00 | 8.00 | 8.00 | 8.00 | 16.50 | 17.75 | 17.75 | |||||
2017年 | 8.00 | 8.00 | 8.00 | 8.00 | 8.00 | 8.00 | 8.00 | 8.00 | 8.00 | 8.00 | 8.00 | 8.00 |
2016年 | 7.50 | 7.50 | 7.50 | 7.50 | 7.50 | 7.50 | 7.50 | 7.50 | 7.50 | 7.50 | 8.00 | 8.00 |
近年、トルコの政策金利はこのような推移で上昇しています。
トルコが金利を高くする理由は2つ
- 外貨を獲得するため
- インフレに対応するため
です。
自国の通貨は、自国で印刷すればいいだけですが、外貨はそうはいきません。
政治や経済的に国は一定の外貨を必要とします。
しかし、これほど不安定なトルコにお金を貸したいと思う国はいません。
だからトルコは金利をあげることで外貨を手に入れようとしているのです。
また、政策金利をあげることはインフレ対策という側面もあります。
インフレ率が高い=市場にお金が出回っている
わけですから、市場に出回ってるお金の量を抑えたいのです。
政策金利をあげるということは、銀行が中央銀行から借りる金利が上がるということですから、銀行が国民に貸す金利も上昇します。
つまり融資やローンの金利が上昇するということです。
すると基本的には国民の消費が抑えられますから結果的に流通するお金の量が減り、インフレ抑制へとつながるのです。
金利が高いのに損をする理由
簡単です。
金利は高いけど、トルコリラそのものの価値が落ち続けているために金利の意味がないためです。
例えば、金利が17%あってもトルコリラの価値が20%落ちてしまえばマイナスです。
そんなもの多分誰でもわかってるはずです。
ところが、結構わかっていながらも損をしている日本人が多いのです。
なぜか。
理由は大きく2つです。
1つ目は、目の前にある高金利の数字につられてしまっている。
日本は長らく低金利ですから、日本人は高金利に非常に弱いです。確かに海外への投資であれば高金利のものは存在します。
賢人が投資してる不動産投資は年利50%とかですからね。
しかし、日本人の金融知識は非常に低いのも現状です。そういった教育がされないばかりか、昔から日本人は「お金の話をするのは汚いこと」のような風潮がありますからね。
その結果、高金利だけにつられてしまって本質的に考えることもなく手を出してしまうのです。
2つ目が思考的な偏りです。
「これだけ下がったのだからそろそろ下げ止まるだろう」
という根拠のない予想です。
例えば、コインを投げて9回連続で表が出たとします。
では次にコインを投げると表と裏どちらが出ると思いますか?
おそらくほとんどの人が「裏」というでしょう。
しかし厳密には常に確率は1/2です。
こうした一種の思考的な偏りが、正常な判断を妨げているのです。
ちなみにこれはFXなどの超短期での投機にも当てはまります。
FXは賢人も好きですが、全体的な資産の割合でみると非常に少ない割合でしかやってません。
FXするのもいいですが、その分しっかりとした投資にも資本をさいて分散投資を行いましょうね。
FXでスワップで稼ぐのは?
「トルコリラ」で検索するとFXの業者やFXでのスワップポイントで稼ぐブログが多くヒットすると思います。
賢人のブログを読んでる方ならお分かりですよね?
これらの目的は、
- FX会社が利用者を増やして手数料を取りたい
- 記事からFX会社への登録を促して広告収入を得たい
- トルコリラをダシに自社商品を売りたい
という目的のものばかりです。
基本的にこれほど不安定なものに対して投資をするのはおすすめできません。
確かに金利差で得ることのできるスワップポイントで稼ぐことは可能ですし、スワップポイントの高いところでやれば、ある程度トルコリラが下落しても相殺できるでしょう。
でも、それだけです。
トルコリラの下落の要因が解消されない限りトルコリラの下落は止まらないでしょう。
つまりリスクの割に結局大した収入を得られない可能性が高いのです。
そんなもののために資金が拘束されてしまうのはもったいないです。
それがわかっているからブログなどでは
「〜まで値下がりしても金利差でチャラ!」という文言が随所に見られます。
そして最後の方には
「そろそろ上昇する気配も^^」
なんて文言が添えられています。
んで、記事見てみたら去年のものだったりね。笑
つまり、結局、本質的にはトルコリラがいつか上がるのに期待しているのです。
まとめ
長々と説明したように長く続くトルコリラの下落は不安定なトルコにまつわる現在の情勢によるものです。
これが解決しなければ基本的にトルコリラは下落を続けるでしょう。
アメリカとの関係を正常化し、若い世代が頑張って働いて、貿易を黒字化し、財政を立て直すことができれば、トルコのポテンシャルであれば上昇はありえるでしょう。
解決できなければ崩壊までありますが…^^;
んで、ぶっちゃけ解決に至る制度や仕組みが見えてからトルコリラに投資しても間に合うと思います。
金利17%とはいえ、トルコの物価上昇率は15%です。
つまりたった2%のためにここまでのリスクを負うのは馬鹿らしいでしょ?
確かにこの方法では、最安値で買って最高値で売るなんてことはできなくなりますが、「売り買いは腹八分」「頭と尻尾はくれてやれ」ともいうように、安全コストだと割り切りましょう。
始めやすい、よくCMやネットで見るからという理由で手を出すのはやめましょう。
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